月の恋人
いつだったか、親父に聞いたっけ。
『おとうさん。けっこんって、なーに?』
『そうだなぁ。“結婚する”ってのは…“一緒になる”とも言うなぁ。』
親父の説明は、
まったく間違っていないが
……致命的にズレていた。
『いっしょ?おんなじになれるの?? じゃぁ、ぼく、ひなちゃんとけっこんする!』
かくして
『しょうらい、けっこんしようね!』
俺にとってこの呪文は
世間一般の事例とは違う使われ方をすることとなった。
子供のころの他愛ない約束なんて
陽菜ちゃんは深く考えてなかったんだろうけど、俺は、大まじめだった。
同じ光の中に、入りたかった。
陽菜ちゃんを中心とした、あの麗らかな世界の住民に、なりたかった。
陽菜ちゃんと
同じものに、なりたかったんだ―――…