月の恋人
◆
かくして、俺はタケルの罠に嵌った。
必然とも言うべき展開だったのかもしれない。
滑り出しは順調……と、いうか、もう止まらなかった。
声にならない言葉の代わりに
俺が紡いできた旋律は
タケルとジョージという増幅装置を経て、何倍にも広がっていく。
彼らは、俺が楽譜という平面に描いた世界を
現実という立体的な姿に変えてくれた。
重ねれば重ねるほど、
化学反応のように色を変えていく
音色の妙に夢中になった。
そこには、
無限に広がる、小さな宇宙があった。
【メロディフラッグ】 終