月の恋人
◆
「………… そう、だったんだ…」
あたしは、翔くんとタケルさんの話を聞きながら、呆然としていた。
あまりにも、世界が違いすぎて。
「金髪にしたのは、バンド活動のため?」
「んー… まぁ、それもあるけど… コイツ、見た目派手だし。でも結果的にリトマス試験紙にもなって良かったよ。」
――… リトマス試験紙?
「どういう意味?」
「所詮、ひとは見た目で判断されるってこと。」
わかるような、わからないような。
「うちに来てから、お昼間ずっとここに来てたの?」
「うん。陽菜ちゃん家からならここ近いし、夏休み中通えて便利だなと思って。」
「便利だから…… うちに来ることを承諾したの?」
「まぁ、それだけじゃないんだけど…」
―――… それだけじゃ、ない?
「じゃぁ―――… あの、“鹿島さん”は…?」
プッ、と翔くんが吹き出してくすくす笑い始めた。
「なんか、俺さっきから質問責めだね。」
「いや、でもそれ、良い質問だと思うぜ。」
「―――… タケルさん?」