月の恋人
◆
「涼くん、スイカ切ったで、食べりん。」
ばあちゃんが縁側で俺を呼ぶ。
「あぁ、ありがと、ばあちゃん。」
―――…
8月に入って、蝉の鳴き声も変わってきた。
クマ蝉から、ミンミン蝉に。
いくらかリズムのあるその音を聞いていると、無限のループに落ちていくような気分になる。
まるで今の俺みたいだ。
始まりも終わりもハッキリしなくて、ずっと同じメロディを繰り返す永遠のループ。
そこから抜け出すのに……
芹沢のおじさんの提案を受け入れるのも、悪くないのかもしれない。