月の恋人




「涼くん、スイカ切ったで、食べりん。」


ばあちゃんが縁側で俺を呼ぶ。


「あぁ、ありがと、ばあちゃん。」



―――…



8月に入って、蝉の鳴き声も変わってきた。

クマ蝉から、ミンミン蝉に。



いくらかリズムのあるその音を聞いていると、無限のループに落ちていくような気分になる。


まるで今の俺みたいだ。


始まりも終わりもハッキリしなくて、ずっと同じメロディを繰り返す永遠のループ。



そこから抜け出すのに……


芹沢のおじさんの提案を受け入れるのも、悪くないのかもしれない。







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