月の恋人
―――…嫌なわけ、ない。
“翔くんが、うちに来る”
そう告げられてから
あたしの心臓は
急にドキドキ心拍数をあげて
もう、苦しいくらいだ。
嫌なんてこと
ある訳、ない。
「―…翔が来たら、タイクツしなくて済みそうじゃん。……いいんじゃね?」
弟の涼(リョウ)が、そう応える。
その内容とはうらはらに、不満げな顔をしていたのが、少し気になった。
…珍しい。
いつも、太陽みたいに天真爛漫で明るい子なのに。何か、気に食わない事でもあるのかな。
「…陽菜は?」
パパが
あたしに水を向ける。
あたしは
ドキドキを気づかれないよう
必死に、平然を装った。