月の恋人



「陽菜ちゃんって、意外と意地っ張りだよね。」


ふ、と


あたしを見つめたまま
翔くんがため息混じりに笑う。




―――――… ドキン、とした。



タケルさんの家でのキスが甦る。






どうして、あの時

翔くんと唇を合わせてしまったんだろう。



前に無理矢理されたのと全然違う―…


それは、たとえば

神聖な儀式のようなキスだった。




――――――…






「ま、近いうち、決着つけるから」

「決着………って?」



やっぱり――…

翔くんと涼、前に何かあったんだ……




「――…翔くん、涼と喧嘩したの?」




「――… 陽菜ちゃんって、ほんと面白いね。一緒にいて飽きない。」

「――……え?」



「時々、妙に勘が良いのにね。―…気づかない、フリでもしてるの?」

「翔く――――… わっ…」









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