月の恋人
◆
ここ、【Apollo】は
夜になると、音楽好きな人やアーティストが訪れる、“知る人ぞ知る”バーなんだそうだ。
ジャンルを問わず不定期にライブが行われ
扉の奥には、レコーディングが出来るスタジオもあるらしい。
その、オーナーが、おじいさん。
なんでも、
昔は結構有名な演奏家だったとかで……
「年寄りの道楽、ってやつだよ。なー、じーさん。」
「タケル。お前、口の利き方に注意せんか。“好きにやらせてやれ”と、お前の両親を説得してやったのは、このワシじゃぞ。」
タケルさんとおじいさんの間に、何とも言えない親密な空気が流れる。
「―――――… あ!」
もしかして――――…
「――…どうしたね、お嬢さん。」
おじいさんの、素直な光を宿した瞳。
温かな、包み込むような
ホッとする、このオーラは――…