月の恋人



「あの…… もしかして……。 おじいさんは、タケルさんの、ほんとのお祖父さまなんですか?」




何となく、そう感じた。

だって、二人が醸し出す柔らかい空気は、全く同質のものだったから。






「――… いかにも。ワシは、こいつのじじいじゃよ。」


「―…さすが。勘が良いね、陽菜ちゃん。」




―――――…やっぱり。





きっと、だから。

あたしは、ここが、好きなんだ。





タケルさんの紡ぎ出す音も。


おじいさんの煎れてくれる珈琲も。


ふたりの、笑顔も。

この、空間も。



すべてのカラーは、同じで。





―――――…






タケルさんと、おじいさん。


よく見ると、どことなく似てる。





――…ああ、なんだか。足元が、固まった気がする。


ずっと

よく分からないことが続いて、訳も分からず濁流に飲み込まれたような気分だったけど。




ようやく、少し、自分の立っている場所が見えてきたような――…



――――――…






「陽菜ちゃん、中へどうぞ。」



翔くんが、バーカウンターの奥にある扉を開ける。




ここから、また、

新しい世界が、広がっていく――――…









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