月の恋人
「――… 月は、自分では発光できない。月光は、太陽の光を反射したものなんだ。つまり、月は、太陽がなきゃ、光ることができない。」
「――――… うん。」
「だから――…“Another Moon(オレタチ)”には、“陽菜ちゃん”でなきゃ、ダメなんだ。」
「俺も――――――…」
―――――――…
鮮やかな夕日が、翔くんの金色の髪を照らしていた。
“俺も―…”―――…なに?
『陽菜ちゃんは、俺のモノ、だから』
さっきの言葉が、甦る。
――――… もう、違うってば。
あれは、一種の表現で。
ドキドキするなんて、間違ってる。
違うってば。
静まれ、あたしの心臓!
「陽菜ちゃん―――…」
そう、だから。
いま、翔くんの顔が
間近にあるからって。
唇に―…
唇が、触れそうだからって。
“そんなわけ、ない”んだって。
―――――――…