月の恋人








8月に入った。


先月までの開放的な太陽光線が、少しだけ湿度を増して翳りを含んだように感じる。




それでも、その日は、朝から茹だるような暑さで。


ママがあたしに
庭で採れたイチジクを持たせたのは、
おばあちゃんの体調を心配して、なんだと思うけれど。





「陽菜、ちょっとこれ持って、おばあちゃん家に行ってくれない?」


「え……」





“おばあちゃん家”という言葉に

胸がツキン、と悲鳴を上げた。






あたしの中心に空いた大きな空洞は、

埋まらないまま

時間と共に干からびて、

ヒリヒリした慢性的な痛みすら、そこには存在していた。






「翔くんと一緒に。ついでにおばあちゃんに元気な顔見せてらっしゃいな。」


「ママ…」




(涼の様子、ちょっと見てきて)と、


果実を渡す手に願いを込められた気がした。




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