月の恋人







「おばあちゃん家かぁ、何年ぶりだろ。」


隣町まで、バスに乗って

おばあちゃんの家に向かった。




あたしの右手には、翔くんの左手。



翔くんが、好きだ、と言ってくれたあの日から

あたしたちは、並んで歩くとき、必ず手を繋ぐようになっていた。




あたしがそうしたい、というよりは

むしろ、翔くんの方から、と言った方が正しい。




あたしが少し遅れて後ろを歩こうとすると

翔くんはいつも

不安そうな顔をして振り返って

必ず、左手を差し出すのだった。



あたしの存在を、確認するように…。





少しずつ慣れてきたその、掌の中で

今日は、あたしの右手の方が大きな不安を抱えているようだった。








「陽菜ちゃん、手、冷たいね…。緊張、してるの?」


「翔くん…」




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