月の恋人
バスが、ひとつ停留所を過ぎるごとに
あたしの心臓は鼓動を速めて、右手はその熱を下げていった。
『陽菜が、好きだ』
そう言って消えてしまった涼が
この、先に、いる。
あれから…一体、何日、経ったんだろう。
あたしは、どうして…、
こんなに緊張してるんだろう。
―――…
たぶん、あたしは
涼を失うことが、怖いんだ。
永遠に、失ってしまうことが。
わずか10日ほど涼がいなかっただけで
こんなに、あたしは
空っぽになってしまったのに
決定的な亀裂が入って
涼が、もうこのまま帰って来なかったら。
――…あたしは…一体、どうなってしまうんだろう。