月の恋人




『陽菜が、好きだ』


それに対して、
あたしは…どう、答えたらいい?

どうしたら、涼を失わずに、済む?

どうしたら…戻ってきて、くれるの?




……



涼の居た場所は

涼でしか、埋めることはできなくて。



そんな風に涼を求めてしまう

あたしの、この気持ちは…一体何なんだろう?


この感情を、一体なんて呼べばいい?






………わからない。



あたし、全然…、わからないよ、涼。





あたしの手を、翔くんがギュッと握る。

強い、眼差し。




「涼に…渡すつもりは、ないから。」


なにを?―…あたし、を?



翔くん…

もしかして―… 知ってる?





その、掌が温かくて

込められた力の強さに、泣きたく、なった。





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