月の恋人
◆
それは、あまりにも突然の出来事だった。
朝、目が覚めて、しばらくは普通に過ごしていたのに――…
「陽菜。朝食は2人で適当にしてね。今日は5時くらいに帰るから。」
ママはあたしと翔くんにそう言って、いつものように出て行こうとした。
それに返事をしようとして…気付いたんだ。
「(いってらっしゃい)」
あたしの返事は、音声を伴っていなかった。
掠れた様な空気が出てくるばかりで、一向に声が出てこない。
リビングに妙な間が訪れた。