月の恋人
繰り返される口付けに
次第に意識が霞んでいった。
どうして気付かなかったんだろう。
声にならない声で
翔くんは、別れを告げていたのに。
どうしてだろう。
自分の意思とうらはらに
翔くんの腕の中で、
あたしは、眠りへと落ちてしまったのだった。
「……さよなら。」
あたしをベッドに寝かせて
そう、ひとこと呟いて―…
翔くんは、明け方にこの家を出て行った。
あたしは、翌朝までそれに気付かなかった。