月の恋人









翔くんが、この家を出て行った。

ふたりで、星を見上げたあの夜の
次の、朝に。


ママが、そうさせたのだと、後で聞いた。



あたしは――… 


どうしてだろう。

それを聞いても、もう何の感情も湧いてこなかったんだ。



翔くんがいなくなって…悲しい。寂しい。
勝手な事した、ママが憎い。




それはもちろんそうなんだ、けど…




それはどこか他人の感情のようで。

現実感が欠片もなくて。


音のない声のように

心もまた、現実の熱を失ってしまったようだった。





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