月の恋人
◆
「陽菜、亜美ちゃん来てくれたわよ。」
亜美が家を訪ねてくれたのは、そんな折だった。
たまたま近くを通りかかったから、と言って。
部屋の扉を開けて入ってきた亜美は、あたしの顔を見てしばらく何も言わなかった。
… いえなかったのかもしれない。
「陽菜…ちょっと… まるで病人じゃないの!どーしちゃったのよ!?」
大げさだなぁ、と思いながらベッドサイドに置いたノートに返事を書く。
(ごめんね、声が出なくなっちゃって。)
「それはおばさんから聞いたよ!そうじゃなくて…自分の顔、鏡で見た!?痩せすぎだよ!陽菜!?」
(だいじょうぶ、だよ。ちゃんとごはん食べてるし)
「じゃあ、何でそんなにげっそりしちゃったの!?」
久しぶりに会った亜美は、突風みたいに激しくて。
青空の真ん中にあるお日様みたいに、熱くて。
ここのところ沈みがちだったあたしには
すごくすごく、眩しかった。