月の恋人
「…… 陽菜、ちょっと外へ出ようよ。良い天気だよ。暑いけどっ!」
あはは、と屈託なく亜美が笑う。
「おばちゃん!ちょっと陽菜借りてきますねー!」
そう言って、強引にあたしの腕を引っ張っていく。
昼間に外へ出るなんて、何日ぶりだろう。
あぁ、そうだ、おばあちゃん家に行ったきり…だ。
瞬間、涼の顔が脳裏を過ぎったけど
すぐに、泡のように消えていった。
さらさら、と
全てが流れていく。
何か考えなくちゃいけないのに
思考が散漫で
漠然とした大きな不安がそこにあるのに
あたしは、それに向き合うことが出来なかった。
―――…よわむし。
本当は、分かっていた。
いやな事から目を背けて、逃げてるだけだって。
小さい頃から少しも変わっていない。
あたしは、嫌になるくらい、臆病だ。