月の恋人








扉を開けた途端、焼け付くような陽射しが肌を刺した。


「あっつーい!!たまんないね、陽菜――!」


亜美が叫ぶ。


扉の向こうに、光が溢れる。

その中に、足を踏み入れる。


途端、あたしの全身を、“夏”が包んだ。




鼻から身体じゅうに広がる、むせ返るような緑の匂い。

耳を覆われるような、蝉の声。

瞳に映ったのは、もくもくと力強く立ち上る積乱雲。





ああ、自然は夏を謳歌している。

短い季節を、全力で。





その強烈なエネルギーの源は、他でもない、太陽。


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