月の恋人
「あ、違うの!陽菜が落ち込むこと、ないんだよ!もう大丈夫だし。」
亜美が慌てたように言う。
「なんかね、あたし―…心のどこかで知ってた気がするの。あたしから告白して、半ば強引に付き合ってもらったけど……先輩は、いつもあたしを見てるようで、ちゃんと見てくれなかった。あたしじゃない、誰かを追っていた。
それが何なのか分からなくて不安になったりもしたけど、それが他の女の子だって事に気付いて―…ようやく、すっきりした気分なんだ。」
―…そんなヒドイ話って、ない。
すごく、仲良しだって思ってたのに。
川瀬先輩、ヒドイよ。
「―…泣かないでよ、陽菜。」
亜美が困ったように眉を下げた。
どうやら、あたしは泣いていたらしい。
――…確かに、ヒドイけど
分かってる。
それは2人の問題だ。
あたしが口を出す話じゃない。
川瀬先輩だって、辛い思いをしたんだろう。
これは、もう、終わってしまった事で。
短い交際で、2人が出した結論なんだ。
グラウンドの少年達の姿がぼやけて、ゆらゆら揺れる。