月の恋人
「―…なんて、急に聞かれても困っちゃうと思うんだけど。陽菜が今抱えてること。いつか、話してくれると嬉しいな。」
そう言って、亜美は、ふんわりと微笑んだ。
どこか憂いを含んでいて、でも穏やかで。
また、違う亜美だって思った。
そんな顔をさせたのは―…
先輩との日々、なんだね。
知らなかった頃には戻れない。
成長するって、そういう事なんだ。
あたしたち、こうやって、日々変わっていくんだね。
―…後ろへは決して戻れない時の流れ。
だから―… 涼と 翔くんも。
あたしたち3人も
変わっていって、当然なんだ。
気付けばそれは、切ないほど確かな事実だった。
それでも、心は願ってしまう。
“昔みたいに戻りたい”って。
隣に涼がいて
翔くんがいて
おばあちゃんも、パパもママも
おじちゃんも、おばちゃんも
みんなが、笑っていた。
何気ない日常にあった
かけがえのない幸せ。
――――…