月の恋人
「アキ…お前さぁ、テレビなら自分ん家で観ろよ…。」
呆れながら後ろから声を掛けると
「ばぁか、お前…分かってねーな。うちだとオカンがうるさいんだよ。やれ宿題やれだの塾行けだのと…」
と、超自己中な反論をされてしまった。
「そりゃお前…やってない方が悪いんだろーが。」
「……涼、もしかして、宿題終わってんの?全部?」
「当たり前だろ。」
「ウソっ!見してっ!」
「やなこった。」
―…ここに来てから、陽菜のことを頭から追い出したくて
何かに無心に集中するには、宿題がうってつけだった。
けど、よほど煮詰まっていたのか
気付いたら、綺麗に全部終わっていた。
「お前…ほんと…昔からヤな奴だな…顔は可愛いわ、勉強は出来るわ、女にはモテるわ…」
「悪いな。今更誉められても、宿題は写させてやんねーかんな。」
「ほんと、ヤな奴…」
ガックリ、とアキがうなだれる。
陽菜のいない日常に俺が段々と慣れてきた、そんな頃だった。
その平和なひと時を―…こいつは、簡単に破りやがった。
「そういえばさぁ、こないだ小学校に行って来たんだよ。ジャガーズの練習手伝いに。そしたらさぁ、何と!芝生のとこで陽菜ちゃんとメロンちゃんのゴールデンコンビを発見しちゃってさー!」