月の恋人







この微妙な均衡を保ったままの状況で

先に動いたのは、アイツの方だった。


やっぱり敵わないなと思う。


多分、一生、敵わない。





ばあちゃんと早めの夕飯を済ませた後
居間で涼んでいると、古めかしい音の玄関の呼び鈴が鳴った。


叔父さんかと思って出て行くと…訪問者は、意外な人物だった。





夕闇迫る、午後6時。

そこに立っていたのは
思い詰めた目をした、どこか自分とよく似た顔立ちの少年。





「翔……」


背中を一筋… 汗が伝っていった。











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