月の恋人
◆
コォォ―…という音を響かせて
雲ひとつ無い青空に、
遠く、飛行機が流れていく。
残暑厳しい8月21日。
とうとう―…、この日がやってきてしまった。
今日は、朝からつき抜ける様な青空で。
容赦ない光が、あたしを照らしている。
避けどころのない直射日光に、緊張が高まった。
これでいい。
あたしは――…逃げない。
決意を胸に見上げた空に、横文字が踊っていた。
歩道橋の横断幕には「JTMF」の文字。
Japan Teen’s Music Festival
日本で一番大きな
若手ミュージシャンのためのコンテスト。
ブロックの決勝ともなると
さすがに規模も大きくて
キャパ3千人クラスの大きなライブ会場は、
朝から、黒山の人だかりとなっていた。
それぞれ、出場するバンドのファンなのだろうか。
あちこちで、
バンドのロゴ入りTシャツを着た集団や
水着みたいな格好をした人たち
○○魂、なんて気合の入った法被を着た人たちなど
音楽と同じく
グループによってカラーも様々だった。
「なんか…お祭り騒ぎだわね、こりゃ…」
隣にいるママが、気後れしたみたいに呟く。
そう。
あたしとママは、いま
『Another moon』が出場するコンテスト会場にいる。