月の恋人
「それにしても―…翔くんがこんなこと、してたなんてね。小さい頃から天才肌だなぁと思ってはいたけど…実際にこういう方向に行くとは思わなかったわ。」
人ごみを目に映しながらママが言う。
「悟さんには、音楽というのは一番理解し難い分野でしょうね。あの2人…来てくれるといいんだけど。」
1枚だけ残った手元のチケットを見る。
“あの2人”―…おじちゃん、おばちゃん。
ちゃんと、届いただろうか。
2枚のチケットと共に認(したた)めた
あたしの気持ち―…
悟おじちゃん
佳子おばちゃん。
いまの、等身大の翔くんの世界を―…
ちゃんと見てあげて、ください。
きっと、
ステージを見たら
音を聴いたら、伝わるはずだ。
最高の仲間と一緒に奏でる翔くんの音は
何よりも正直に、
“彼自身”を表しているから―…