月の恋人
「チケットなら、わしがいっぱい持っとるよ。これを使いなさい。タケルに貰ったんだが…両親は海外で、渡す相手もおらんで、なぁ。」
そう微笑むおじいさんの目元に、深い皺が刻まれる。
(おじいさん…)
そして更に
事態は“思わぬ再会”へと形を変えていく。
「志田…喬(タカシ)…先生…?」
その言葉を聞いたおじいさんは、
眉を上げてあたしの後ろにいるママを見て、破顔(はがん)した。
瞬間、場の空気が和む。
「おやおや、懐かしい顔じゃの…えぇと…長瀬さん、だったかの。」
長瀬―…ママの旧姓だ。
――…おじいさん、ママを知ってるの?
それは、
10数年ぶりの教授と生徒の、再会。
あたしの知らないところで、大きな輪が形成されつつあった。