月の恋人
右端の赤い数字が9に変わって
時計は、残り1分を告げる。
あたしの心臓は、心拍数を上げて
全力疾走した後みたいに、ドキドキして。
体中の筋肉が固まってしまったみたいに
そこから、一歩も動けなかった。
――…どうして?
どうして、まだ来ないの?
もう、来ないつもりなの?
始まっちゃうよ――…
ギュッと、目を瞑った、その時
背後の扉が開いて、
そこから一筋の光が射した。
「陽菜ちゃん…?」
外の雑音と共に
耳に飛び込んできた
どこか翔くんに似ている、低くて硬質の声は…