月の恋人
(悟おじちゃん…!)
逆光で、よく見えなかったけど
扉を開けて時間ギリギリに入ってきたのは
間違いなく、悟おじちゃんだった。
後ろには佳子おばちゃんの姿もあった。
―――…間に、合った…
2人とも。
ちゃんと、来てくれた。
駅から、走ってきたんだろうか。
おじちゃんの息は上がっていた。
「いや…、すまないね。…遅くなって。出掛けに怪我をしたものだから…手当てをしてたら…遅くなってしまってね。」
そう言った彼の口元は絆創膏に覆われていて、何故か、頬にタオルを当てていた。
怪我―…?どうしたんだろう。
そして―…もうひとりは……
―――…え?
2人の背後にもうひとつ大きな影が。
瞳が、その人の姿を捉えて
あたしの心臓がドキンと大きく波打つのと同時に
ダン!と大きなドラムが地を蹴って
それを合図に
暗転した会場は、大きなうねりに飲み込まれた。