月の恋人
「いやー、しかし!圧巻のステージだったわねー!あんたたち、このまま全国でも優勝しちゃいなさいよ!」
早くもビールのグラスをあけたママが
会場のテンションそのままに息巻く。
「おや、長瀬さん。良い飲みっぷりじゃの。」
「えぇ、私も苦労しましたからね、この夏は。今日のこの子たちの優勝は、私にとってもご褒美みたいなもんですよ。」
「ママ…」
「涼は帰ってきたし、陽菜の声も、出るようになったしね。」
――…そう、なんだ。
あたしたち3人とも
自分達のことばかりに一生懸命で。
それが、どんなに周りを振り回していたか
ママの一言で
このとき、ようやく気付いたんだ。