月の恋人
「…真理子さんには、本当にご迷惑をかけてばかりで…なんとお詫びを申し上げていいのか…。」
悟おじちゃんが、ママに頭を下げる。
「嫌だわ。そんなことを言ってるんじゃないのよ。私も良い勉強をさせてもらったわ。ほんと、子育てって難しくて楽しいわね。」
「はぁ…」
「思春期の男の子と女の子を、たとえ夏休みだけでも一緒に住まわせるなんて。私は最初反対してたのよ。
うちの陽菜ったら妙にナイーブだし。陽菜が、翔くんのことをずっと好きだったのも、知ってたし。
だけど…トラブルがあったとき、こっちが何とかしようと下手な小細工しても、まるで違う方向へ行っちゃうんだもの、3人とも。
涼まで出て行っちゃうし。陽菜はあんなだったし。ほんと、一時はどうなることかと思ったんだから。」
――…ちょっ…と、待って、ママ。
いま、なんかものすごく自然に…
自然に…さらっと…とんでもない事を言われたような。
「好き…?」
ほら、悟おじちゃんが目を丸くしてる。
「好き……って」
翔くんまで、こっちを見る。
そんな、どうでもいいところをピックアップしないで下さい、ふたりとも。