月の恋人




あ、これ。


知ってる。




これ、翔くんの、キスの合図だ。




ほら、唇がうすく開いた。



それで、あたしの唇を食べちゃうみたいにするの、知ってるもん。








鼻に、鼻が軽く触れる。






「ちょっ…と…待って、翔くんっ。」


「待てない。」




ダメだよ。


今日くらい、ちゃんと―…






「もうっ、ちゃんと、言わせてよっ!」





唇が重なる5センチ手前。

あたしは必死の思いでその言葉を口にした。






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