月の恋人
「翔くんが―…、好き。」
もうずっと昔から
車の中で 他愛ないキスをして
くりかえし、呪文を唱えたあの頃から
ずっと、
翔くんのことが、好きでした。
「……もう1回、言って。」
「――…すき。」
「―…俺も、陽菜ちゃんが大好き。」
重なった唇に、太陽が顔を覗かせて
新しい一日が、始まりを告げる。
日の出だ。
なんて、希望に満ちた朝の色―…
ねぇ、翔くん。
呪文を聞かせて。
無邪気な子供の頃のように―…
『しょうらい、けっこんしようね』
そしたら、
あたしは
新しい約束の言葉で答えるから。
『ずっと、そばに、いるよ』
――… 一緒に、歩いていこう。