月の恋人




「……翔くん、かぁ……びっくりさせないでよ、もう………」




心臓に悪いよ。

まさか翔くんがいるなんて
思ってもみなかったから…



「…後から来たのは、陽菜ちゃんの方だよ。」


翔くんが可笑しそうに言う。





―――…あれ? なんか…


夕飯の時より、ずいぶんくだけた感じがするのは…気のせいかな。




「…なに、してるの?庭で、こんな夜中に。…虫に、刺されるよ?」



どうして、あたしはこう

ムードのかけらもないことしか言えないんだろう…。



真夜中に、突然
好きな男の子と2人きり。


こういう時、

……なんて言えばいいの?






「ぷっ。……陽菜ちゃんはほんとに面白いなぁ、もう。天才だね。」



翔くんが軽く吹き出す。





――…また面白がられてる?





どうして、かなぁ……


翔くんが、笑ってくれた。


緩んだ表情が

無性に、嬉しくなっちゃう。







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