月の恋人


「……月光浴。」


「は?」



「月光浴、してたんだ。今夜は、とても、月が明るいから。」


「げっこうよく?」




…月光、浴…
ああ、なるほど。漢字に変換してみたら理解できた。


「月の光、ねぇ…」


確かに、外を見ると
真夜中にも関わらず、空が少し白んでいて、庭の草花や木々の葉が、月光に照らされてくっきりと目に映った。





「陽菜ちゃんも、おいでよ。」





――… 一瞬、眩暈がした。


その台詞に。


完全に翔くんのテリトリーであろう
その、真夜中の庭に
「おいでよ」と
翔くんがあたしを
招いてくれたから。



網戸の向こうは、翔くんの世界。




その魅力に
抗えるはずも、なかった―――


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