月の恋人



「俺が髪を染めてから、親父の“陽菜ちゃん信仰”はエスカレートするばかりでさ。」


…“陽菜ちゃん信仰”?


「陽菜ちゃんみたいな、良い子が育つ兄貴ん家だったら、翔も更正するに違いない、って。ホント、余計なお世話だと思わない?」


背中に回された翔くんの手に、ぐっと力が入って、拳を作ったのが分かる。

苛立ちが、伝わる。




ああ、今わかった


翔くんの視線に含まれていた
憎しみのような色



あたしに


意地悪しようと思ってた理由。





「……翔くん………」






< 79 / 451 >

この作品をシェア

pagetop