月の恋人
「俺が髪を染めてから、親父の“陽菜ちゃん信仰”はエスカレートするばかりでさ。」
…“陽菜ちゃん信仰”?
「陽菜ちゃんみたいな、良い子が育つ兄貴ん家だったら、翔も更正するに違いない、って。ホント、余計なお世話だと思わない?」
背中に回された翔くんの手に、ぐっと力が入って、拳を作ったのが分かる。
苛立ちが、伝わる。
ああ、今わかった
翔くんの視線に含まれていた
憎しみのような色
あたしに
意地悪しようと思ってた理由。
「……翔くん………」