月の恋人
「あーあ、綺麗な足なのに、台なしだね…ゴメン。」
最後の“ゴメン”が
2人にだけ聞こえるくらいの
小さな声で
なんだか
『2人だけの秘密ね』って
言われてるみたいで
足も
耳も
すごく、くすぐったい。
「翔くんは、大丈夫かしらー?よく眠れた?陽菜みたいに刺されなかった?」
ママがキッチンでフライパンを返しながら翔くんに呼びかける。
そうだよ、翔くんは?
ゆうべ
同じ場所にいたんだから
翔くんも刺されまくってるはず…
「ハイ、お蔭さまで。俺、代謝が良いんで、蚊に刺されてもすぐ腫れが引いちゃう体質なんですよ。だいたい、部屋の窓はちゃんと閉めたし…」
……なんですって。
そんなの……
そんなの、反則じゃない!?
「あら、そぉ!若いって、良いわね〜!見習いなさいよ、陽菜。」
…なんでこうなるの?