月の恋人
ちょっと遠い目をした
翔くんの
物憂げな表情に
胸が
キュッ、って
音を立てた気がした。
―…どうして、そんな顔するの?
――翔くんのこと、
―――もっと知りたい――
「り、涼でよかったら、いつでも貸すよ!好きなときに持ってって!」
「ばっ……バカ!陽菜、おまえ、何勝手なこと言ってんだよー!!」
「たまには、役に立ちなさいよ!あと、“お・姉・ちゃん”!!」
ぎゃいぎゃい、とエンドレスになりそうな不毛なやり取りに
「お。んじゃあ、涼、キャッチボールしに、外行こうぜ。」
と、軽やかに終止符を打ったのは、翔くんだった。