月の恋人
近くの公園へ行くという
翔くんと涼を見送りながら
あたしは
張り詰めていた糸が
緩んでいくような
不思議な脱力感を覚えていた。
さっき
翔くんにつねられた
頬っぺが、熱い。
『陽菜ちゃん家は賑やかでいいなぁ』
『うちとはやっぱ全然雰囲気が違う』
さっきの翔くんの言葉が
何故か、切ない。
どうしてだろう。
どうしてかな。
考えても
考えても
答えなんか出なかった。
リビングのソファに座ったら
『うーん、うーん』って悩むみたいに
庭のひまわりが、風に吹かれて重い頭を揺らしていた。
なんだか、自分の姿を見ているみたいで
おかしさが、こみ上げてきた。
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