不器用男子

「千隼…。」


　思わず胸に飛び込んだ。


「え…。」

　千隼は驚いてる。


　そりゃ、呼び出しといて急に抱きつかれたらそんな反応はするだろうね。


「千隼ぁ…。」

「泣いてんの…?」

「泣いてない…。」


　言いたいことなんか全部頭から消えてた。

　それぐらい千隼には嫌なことを忘れさせてくれる力があるんだよ?


　千隼は知ってた?



「…で?　なんか用あった?」

「…え?　…あっ!!!　忘れてた…。」

「みんな待ってる」

「何から話せばいいかわかんない!!」


　正直、それだった…。


「東内のこと?」

「それもあるけど…。　千隼はさ…私のこと…好き…?」


　…また沈黙…。


　こういうときぐらい、男らしくなってよ!!

　振られる覚悟はあるよ?

　樹里菜ちゃんのほうがいいんだったら私は別れるよ?


　だから早く答えて!!

　どんどん不安になっちゃう。