不器用男子
 何もしないでください…。


 無意識に千隼の手をいつもより強く握りしめた。

「気にすんな」

 まっすぐ前を見ながら千隼が言った。

「…大丈夫だよ…。」


 学校から出るとすごくホッとした。


 寮につくと凌君が迎えてくれた。


「ひなみちゃん、お帰りーっ!!」


「凌君? なにかご機嫌だねーっ?」


 いつもにこにこしてるけど、今日はもっとすごい笑顔。

 落ち着きもない。

「わかるー? 実はね? 彼女ができたんだよーっ? まだみんなには内緒だよ?」

「…彼女、いなかったの?」

「うん」


 こういう系の人はてっきりいるのかと思ってた。

 凌君は大学生になってもまだ全然モテてる。

 寮までファンレターや女子の軍団が押し寄せてくる。


 私はねんのため…寮に引きこもって姿を現さないけど…。


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