不器用男子
「あったか~い……。」

 ロビーでソファに座り缶のココアを飲む。


 素足だから足が寒い。


 スリッパなんて役に立たない。



 少し厚めのスウェットも普通のと変わらない気がする。


「うぅ……寒いと思ったら雪かぁ…。」


 ふと外を見ると白いものが街灯に照らされてる。


「…寝よ…」


 雪を一人で見てると寂しさが増えちゃう気がした。


 少しでも嫌なことは考えたくない。 


 廊下に漏れる千隼の部屋の明かり。


 まだ起きてるんだ……。


 千隼の部屋のドアを横目で見つめながら歩いた。


 ……足が絡まり大きな音を立てて転んだ。

「いったぁぁ……」


 もう、千隼とこういうことがあるたびにこける。


 千隼には私を見つけてほしいけど、見つけてほしくない。


 そんな気持ちがある私は急いで立ち上がり部屋に戻る。

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