不器用男子
「っ…悪いっ…今日はここでひとまず退散!! ひなみちゃん絶対奪ってやるから!!」

 青い顔のまま走って大学を出て行ってしまった友哉君。


 最後までそんなこと言ってる。


「何…あいつ」

「桜ちゃん…友哉君と知り合いなの? …その前にそこから離れて…」


 しぶしぶ千隼の腕から離れた桜ちゃんはゆっくりと話しだした。

「あの人は幼馴染。 っていうか婚約者。」

「…婚約者? 婚約者は千隼じゃないの?」


 …どういうこと?

「友哉のは断ったっていうか…千隼君のほうがかっこいいし…お金持ちだし…」

 そんなことをぼそぼそ言ってる。

 少し顔が赤くなってる桜ちゃん。


 …もしかして…?


「桜ちゃん…友哉君のこと好きなの…?」

 ひょっとして…?

「あんな奴のどこが!! あいつとはただの同級生で…ブツブツブツブツ…」


 …すきなんだ…。

 素直になれないんだね?


 千隼と同じ…。

< 218 / 244 >

この作品をシェア

pagetop