不器用男子
 急いで走って行くと見たことある顔ってか、凌君。

「近くまで来たからさ、ちょっと寄ってみた!! 繁盛してるねー?」

「ありがと!!」


 凌君は大学を出てから千隼の会社で働いてる。

「でもね、好きな人をレジに入れてもらえるっていうのは千隼妬くんじゃない?」

「…そう? でも、大丈夫!! 私はそんなにモテないから、誰にも選んでもらえないし…平気だよ?」


「ふーん? ま、いいけどさ…千隼が怒った後でも知らないよ?」

「?」


 凌君は旅行雑誌を一冊買って帰って行った。

「ひなみちゃん、あの人かっこいいですね? 誰ですかぁ?」

 桜ちゃんが興味しんしんで聞いてきた。

「凌君は私の先輩だよ?」

「へぇー? 好きだったんですか?」

「すっ、好き!? 違うよー?」


 ニヤニヤしながら去って行った桜ちゃん…。


 私の初恋は千隼だもん!!


 仕事が終わって家に帰ると千隼はもう帰ってきていた。

「千隼? 早かったねー?」

 千隼がグタッと座ってるソファの隣に座った。

「あ? ……ぁぁ……」


 顔が赤い…。

 飲んできたみたいだね?


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