不器用男子
「…。」


 千隼は返事もせずにただじっとしているだけ。


「いいんですね? ありがとうございます!! 千隼先輩♪」


 樹里菜ちゃんは勝手に解釈をして千隼先輩って呼び始めた。


「よっ、よかったね!!」


 千隼にも樹里菜ちゃんにもそんなズルイ考えを見抜かれないように元気に声をかけた。





「ねぇ? さっき喋ってた子って東内 樹里菜だよね…?」

 教室に入ると優里が話しかけてきた。

「そうだよ~? 知ってるの? いい子だよねっ!?」


「知ってるも何も…知らなかったのあんたぐらいじゃないの?」

「そうなんだー?」

「あんまりいい噂聞かないけど…いい子なのかなぁ…。」

「噂…?」


 樹里菜ちゃんの悪い噂って何…?


「知らない?あの子中学の時嫌いなこの男を奪っては、いじめとか繰り返してたって…」


 嫌いな子…?


 いじめ…?



 そんな子なわけないじゃない…?


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