【COLORS②】ほろ苦ワインに酔いシグれ
キャバクラの呼び込み、酔っ払ったオヤジにやけにベタつくカップル……行き交う人々はそんなのばっかりだ。

只今、午後九時。
終電までもう一杯は行ける時間だ。

と言ってもまだ俺は本日の最終勤務を終えてから、何も食べていなかったりする。



「俺も一杯だけ飲んでいくか──」

それは裏路地に入ったところで静かに佇んでいた。

看板には『Barしぐれ』と書かれている。

すきっ腹にアルコールを飲むと酔いが回りやすいらしいが、今の俺にはそんなことは問題なかった。
寧ろ、少し酔って嫌なこと全部忘れたかったのかもしれない。





カラ、カラン……





俺は見えない何かに導かれるように、迷いもなく店の扉を開けていた。
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