【COLORS②】ほろ苦ワインに酔いシグれ
「『蛙の子は蛙』って言葉知ってます?」

「ええ……まぁ」

一般常識の知識くらいは心得ているつもりだ。

「生まれた時から自分の意志とは関係なく、運命を決められている人もいるんですよ」

「『蛙の子は蛙』……確かにそうなのかもしれないですね。俺の父親はごくふつーのサラリーマン、特に出世することもなく……ね」

そんな当たり前で地道な道を俺も歩みかけてたんだ。だけど、どっか心ん中でひっかかってて。
これでいいのか……?って問う自分が居た。

「でも私は時として蛙が『大蛇』になっても、あひるが『白鳥』になってもいいじゃないかってと思うんです」

「!!」

「諦めきれない思いがあるならもう一度だけ、挑戦してみたらどうですか?諦めなければ、きっと夢は叶いますよ」



少しずつでもいい。
自分のやりたいことゆっくり見つけていこう。

俺は心の中のモヤモヤしていたものが、一気に軽くなったような感覚を覚えた。





次の瞬間、この店での俺の記憶がふっと途切れたのだった。
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