花を愛すように君を愛そう。
気付くと、私は菖蒲さんの部屋の前にいました。
ただ、いただけではありません。涙が、つうっと一滴。
こぼれて、こぼれて。いつの間にか一滴ではすまないほどの涙がこぼれていました。
菖蒲さんの部屋の前は、花で覆い尽くされています。
花で埋め尽くされるここには、私と菖蒲さんの思い出がたくさん詰まりすぎていて。
どうしても涙が出てきてしまうのです。
幼稚舎に入ったとき、私は友達に馴染めず家からはなれることが出来ないことがあった時も、ここに来て菖蒲さんに抱きかかえられて泣いていたことがありました。
そのとき、菖蒲さんは何も言いませんでした。
でも、私を抱きしめる腕は強くて。
その腕の強さに、私は安心して涙を止めることが出来ませんでした。
その後、私が泣くたびに庭に花が増えていきました。
「どうして花が増えるの?
誰が植えてるの?」
そう私が問うと、ぶっきらぼうな菖蒲さんは顔をしかめて、
「君が泣くことの無いように、植えているんだ。私が」
勇気、希望のその行動を不思議に思った私は、家に帰ってその花を調べました。
そうしたら花言葉が、勇気、希望の「ように、前へ進む後押しをしているような花が多いことに気付いて。