あやめ



僕はそれとなく彼女を避け、それに気付いて気分を害した彼女は、その感情の矛先を莉子に向けた。


莉子がその子からひどい嫌がらせを受けているということは、たちまち噂となった。


しかし同時に、例のありもしない話が流通し、なぜかみんなそれを信じているようだった。


いじめに立ち向かう強さを持つのは、莉子くらいしかいない。


だから、莉子をかばう人は誰もいなかった。


僕もその一人だ。


「莉子って巧の彼女なんだろ?なんかすごい噂あるけど、本当なの?」


「別に彼女じゃないし。関係ない」


自分の好きな人がいじめられているなんて、嫌だった。


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