あやめ



その頃、朝練をしていたのは僕だけだった。


職員室で体育館の鍵を借りて、いつもと同じように扉を開ける。


体育館の中が妙に明るかった。


グラウンドに繋がる扉が開け放たれている。


逆光の中、床に何かが転がっていた。


最初、掃除に使うモップか何かかと思った。


昨日は、普段から行儀の悪いバレー部の当番だったから、きちんと後片付けをしないで帰ってしまったのだろう。


朝練の前に片付けをしなければと、面倒な気持ちで、体育館に足を踏み入れた。


でも、その足はたちまち地面に貼りつく。


上からぶらさがっているものに、気付いたからだ。


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