あやめ



僕は体育館に鍵をかけて、職員室へと走った。


「中川?朝練じゃなかったのか?」


バスケ部の顧問を見つけて、僕は彼にしがみつくようにして言った。


「先生…!助けてください!莉子が…莉子が!!」


ただならぬ様子の僕を見て、数人の先生が体育館に走る。


莉子の足元に転がっていた脚立を使って、先生が莉子を下ろそうとしている。


でもうまくいかずに、莉子の体を抱えながら、何か叫んでいる。


もうひとつ脚立を持ってこいとか、何か切るものを持ってこいとか、救急車を呼べだとか、警察を呼べだとか。


怒声のような声が、体育館に反響していた。


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